こんにちは、辻川です。
先日、「他院で顎のヒアルロン酸・ボトックスを受けた後に顔が変になった」という訴えの患者様が来院されました。
診察してみると、「開口時に片方(左)だけ下唇が下がらず、左右非対称に口元が歪んだ状態」でした。
どうやら、本来はボトックスが作用すべきではない下唇下制筋(=下唇を下に引っ張る筋肉)に、片側(左)のみボトックスが波及してしまっているようでした。
顎(オトガイ筋)ボトックスや口角(口角下制筋)ボトックス後のトラブルとしてたまにあるのが、この【片側のみの下唇下制筋への薬剤の浸潤による、開口時の口の歪み・左右差】です。
ボトックス注入を行う場合は、適切な量を、適切な場所の、適切な深さに注入する必要がありますが、このいずれかに誤りがあると、ターゲットとしていない近傍の筋肉にボトックスの作用が及んでしまい、このようなトラブルが発生することがあります。
不慣れな医師のテクニカルな面が原因の可能性もあるのですが、今回は同時にヒアルロン酸注入が行われていたということで、なんとなく気になったので「ヒアルロン酸とボトックス、どちらから先に治療を受けましたか?」と尋ねたところ、患者様は「確かボトックスを先に打たれた」と回答されました。
これが、原因となった可能性もあります。
ボトックスとヒアルロン酸を、同じ部位に同じタイミングで注入する場合、ヒアルロン酸注入を先に行ってから、最後にボトックス注入を行うのが原則です。ボトックス注入後にヒアルロン酸を注入してしまうと、硬さのあるヒアルロン酸によってボトックスが押し出されて、目的でない筋肉に移動する可能性があります。
結局、この時は、もう片側(右)の下唇下制筋を狙ってボトックスを少量注入し、経過を見ることにしました。
レーザー、IPL、ハイフ、RF、ヒアルロン酸…同じ日に施術を受ける場合、ボトックス注入は最後に行う治療です。